- Interior
- 2021.06.25
安らぎの空間を創る天然木の床
西村 公孝
木質建材メーカー朝日ウッドテックの西村と申します。
当社は趣のある木材を選び抜く銘木商をルーツに持ち、天然木に拘ったものづくりをしています。
私からは木と床・壁をテーマにお届けいたします。
■木目のゆらぎ
朝の太陽光や照明に照らされてキラリとゆらぐ木目の美しさに心を打たれた経験はないでしょうか?
木肌が光を受けて放つ光沢「照り」は鏡や金属のように眩しい輝きではなく、
あくまで優しく柔らかく、見るものの心を癒やしてくれます。
天然木がなぜ人に「癒やし」を与えるのか。
それは太古より木と共に生活してきた記憶が人のDNAに刻まれているからだと言われますが、
科学的に考えるといくつかの理由が挙げられます。
ひとつは、木の色が「暖かい」「和んだ」イメージを与える暖色と呼ばれる色相にほぼ含まれており、
見た目に暖かいことです。
また、木目となる年輪幅が年ごとの気候変動を反映して微妙に広くなったり狭くなったりしており、
人に快適感を与える「1/fゆらぎ」と呼ばれる自然なリズムを持っていることも理由として挙げられます。
そして、その「ゆらぎ」という点では、光の照射方向や見る向きによって表情が変化する
天然木特有の光沢「照り」が重要なポイントではないかと思います。
この「照り」という現象が起こるのは木材の3次元的な組織構造に起因しています。
もともと生命体であった木材は細胞の集まりです。
その細胞壁に光があたり乱反射することで独特の光沢「照り」が現れるのです。
また、マホガニーやサペリなど交錯木理(こうさくもくり)を持つ
樹種の柾目面に現れる濃淡の縞模様「リボン杢」は、みる方向によって濃淡が逆転します。
これら、光の照射方向や見る方向によって表情が変化するという現象は、
人工物ではなかなか再現できない、細胞という複雑な組織構造を持つ天然木ならではの特徴です。
■空間の魅力を増幅する天然木の床
床に天然木フローリングと精巧に木目を再現した印刷シートのフローリングを貼り比べると、
私たちはその部屋に入った瞬間にその違いを感じ取ります。
それは、足触りの違いだけでなく、素材が醸し出す空気感の違いを視覚的に感じ取るからです。
どんなに高性能なカメラでも、網膜ほど高性能な感光膜(光を感じ取る)は持ち得ないだろうと
言われているほどに、人の眼は見る向きや光の当たり方で変化する木目の「照り」「ゆらぎ」を
敏感に感じ取ります。
すべてのものがインターネットに繋がるIOTが進み、生活が大きく変わっていく中で、
人と物、空間との関わり方は大きく変化していきます。
暮らしが便利になっていく一方で、ゆっくりと安らげる場所や時間が少なくなるという弊害も出てきており、
空間にどうやって癒やしの要素を取り入れていくかはインテリアの大きなテーマとなっています。
そこで今、自然が織りなす「ゆらぎ」が人のための心地よい環境として見直されてきています。
人は天然木の木目や「照り」に心地よさを感じます。
そして、大きな面積を占める床面において、その「ゆらぎ」は、空間全体の空気感を
大きく左右するほどに重要なポイントとなります。
ぜひ皆さんも、天然木の床の「照り」「ゆらぎ」に注目してみてください。