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美しい住まいの明かり②

タカキ ヒデトシ

そもそも、なぜ照明が必要なのか。住宅の中でどうあるべきか。
そういった原点に戻ってデザインすることが必要です。

似たようなものの間に、共通に認められる性質や特徴である「プロトタイプ proto type」と呼ばれる “ 類型 ” ではなく、
歴史や文化あるいは一般常識とった「アーキタイプ arche type」や「マザータイプ mother type」といわれる“ 原型 ”
にまで立ち返るべきなのです。

流行や経済に流されてしまうと、どこのメーカーも、どんな設計士もデザイナーも、みんな同じものを追いかけて、
同じようなものしかつくれなくなってしまうもの。
けれども、デザインの理想を追い求める生きがいや、働きがいを常に意識して行動することは、
デザイナーには当然必要なことです。
これが無ければ「デザインのような」仕事で「豊かなような」社会が残るだけになってしまいますからね。
そのためには僕自身が 「 デザインの効能 」 を示さなくてはなりません。
そこで、古典文学をモチーフにした現場を紹介します。

「春はあけぼの ようよう白くなりゆく山際 少しあかりて
紫立ちたる雲の細くたなびきたる」

このうたは平安時代中期に中宮定子に仕えた女房、清少納言により執されたと伝わる随筆『枕草子』の第一段。
夜明け前の状況を美しい言葉で見事に表現しています。

こちらは、京都の森の中に建つ“片流れの勾配屋根”の家です。
二階リビングの“片流れの勾配天井”に沿わせて二重天井とし、間接照明のみで計画。

二重天井の先端部分は家具工事での造作。
なので、先端部分は“線でしか見えてきません。

この空間には、清少納言の『 枕草子』をメタファー( 隠喩 )として隠してあります。
「春はあけぼの ようよう白くなりゆく山際 少しあかりて 紫立ちたる雲の細くたなびきたる 」
日の出前の“あけぼの”時刻に、シルエットで浮かぶ山の稜線に見立てた二重天井から
“ようよう白くなりゆく”光の情景を表しているのです。

 


ライトアップされた森の木々が白み、その景色が暖炉の火を中心としてリビングへ取り込まれていく。
さらにここでは、お互いの色を引き立たせる“補色”効果を光で表しています。

補色の関係 12等分 「 色相環 」

スパイク式のスポットライトで常緑樹を「白色光」でライトアップ。
「青あお」とした背景色の中に、暖炉の火の「赤」と間接照明の「電球色」が“補色”の対比によって
お互いが引き立って見えることが写真でわかると思います。

古典文学の光彩をあらわす表現力は『照明計画』の「アーキタイプ( 原型 ) なので、
このような詩情的な空間を“かたち”にすることを常に心がけています。

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